
＜七つの壁、昼と夜とは何か？＞ 
改めて七つの壁とは？レイはあの方に頭でっかちを批判されてしまったが、私は壁の挑戦者ではないので、考えることに意味がないとは思いたくない。
137話ではレイが「七つの壁」という現象を、量子論的アプローチから時空の物理的限界として説明しようとした。 ところが140話ではあの方が、「七つの壁」を主観的意識の限界として定義し直し、読者に混乱を仕掛ける。「なにもないけどなんでもある」「せかいはかれ、かれはせかい」「じぶんをせかいをときはなつ」。
これを見た私は般若心経でおなじみの「色即是空」の四文字と「唯識論」を思い出した。私は全く仏教に詳しくないが、唯識論とは何か、ウィキの受け売りを借りてめちゃ乱暴に説明すると、「この世界に実体は何もない」「自分の意識こそが世界なのだ」という仏教の考え方のこと。唯識論は大乗仏教の教えを支える難しい思想体系で、この理論では世のあらゆる存在は、八識（五感、自覚された意識、二つの無意識）が生み出していると仮定する。つまり、心が世界を生み出していると考える（より正確に言えば最終的には「心」さえも実体がない「空」だと考える）。 
そう、「八」識なんです。八つの識とは、まず、五感の知覚による認識である五識、そして普段自覚される意識である第六識。それから、煩悩など自分に執着する無意識である「末那識」、ここまでで七つ。 それよりさらに深い層にあり、世界をつくる意識の源である潜在意識が「阿頼耶識」。 
結論を言います。「昼と夜」とは七つの識の向こう側、八識めの阿頼耶識じゃね？ 
思い出して欲しい。七つの壁への入り口をくぐったエマとレイは、あの方に「あそぼ」と言われて、記憶のイメージを見せられ、そこから深く潜り、迷路をあてどなく彷徨わされて五感を狂わされたことを。これは五識と意識（第六識）を「ときはな」たせられ、七つ目の無意識・末那識に放り込まれ、そのさらに先の潜在無意識（阿頼耶識）に到達するための強制修行だったのでは？ 
レイは七つ目の壁、末那識で一度立ち止まり、膝を折りかけたものの、エマに励まされその先へ進もうとした。しかしレイは己への執着、己の知識、己の知覚を捨てられず、結局は「七つの壁」＝「七つの識」のその先の八番めの阿頼耶識に辿り着けなかったということでは？
だいたい137話のレイの「七つの壁」の解釈だけでは釈然としないものが残るんですよね。六つが立体すなわち空間の壁で、残り一つが時間の壁なら、「四次元の壁」すなわち「四つの壁」で良かったじゃん、って。 でも、もしも「七つの壁」が、レイの言うように量子論的アプローチのみによって定義把握できるのではなく、主観を重視する精神的アプローチによっても理解把握できるように設定されてるとしたら合点がいく。 
レイの「七つの壁」理解は言わば、西洋の近現代科学の系譜に連なるアプローチからの理解だ。一方、あの方が語った説明は、インド発の東洋の仏教の思想体系に見られるものに近いと私は思う。「七つの壁」の正体は、そうやって多面的に理解しようとすることでよりトータルに把握できるものなのかもしれない。

追記。これは他の方のツイートを見ていても考えたのですが、七つの壁の先の「昼と夜」はユングの集合的無意識領域と解釈することも可能そうですね。ユングは無意識領域に、民族や時代を超えて人類が普遍的に共有するイメージの元型があると考えた。エマの「約束」は鬼と人のこの潜在的共有意識のイメージや制約を書き換えるもの？ 

※140話公開当時の感想の再掲載です。